スミスです。
今日は大作家コーマック・マッカーシーの「ザ・ロード」の紹介です。
舞台は世界が滅亡し人類の大半が消えた近未来のアメリカ。ショッピングカートに必要最小限の荷物を乗せて南を目指して歩いていく父と子の物語。
ジャンルはSFになりますが、難しい設定はなく、とにかく父と子と後悔した世界を淡々と描いた物語です。本当に淡々としております。神や神話に基づいた話や会話が出てきますが、それが世界観をぐっと引き締め、読者に考えさせる機会をもたらす効果を生み出しています。
生き残った人物たちにまともな人はおらず、食料が尽き果てる中、人はグループを作り、仲間ではない見知らぬ人を食おうとする。そんな中でも父と子は互いに生きる希望を捨てずに、ショッピングカートに荷物を乗せて進み自分たちを「火を運ぶ者」として、何があろうと前を向いて歩いて行く。
いくつかの困難を乗り越えるも疲れ果て痩せ細った二人は奇跡的にシェルターを掘り当て、保存用の大量の食料を見つけ幸せなひと時をすごします。父は伸びきった髭を剃り落とし正装し、子は汚れに汚れた体を洗い流し、いつかの当たり前だった日常を取り戻します。
シェルターで物語が一件落着すればいいのですが、そういうわけにもいかず。やがて訪れるだろう「寒さ」や「追い剥ぎたち」から逃れるため、食料をカートに入れシェルターを出てまた南へ進むことに。幸せは長く続かない。これも人生の掟や神の啓示に忠実に基づいたあらすじなのかもしれません。
なぜ親子は南を目指し歩くのか?
その設定は文章中では一切語られておらず、荒廃した世界の雰囲気から読み取ることしかできませんが、翻訳者のあとがきには「おそらく核戦争か環境破壊により地球が破滅し、寒冷化が進んでいる」という設定があるのではないかということらしいです。
この話は滅亡世界を描いたディストピア小説と父子の物語でありましょうが、ミニマリスト的な視点で見ても面白いです。
カートに荷物を乗せて引いて歩いてく。避けて通れない移動生活のため最小限の荷物で生きていかねばならない運命。ときにはカートを捨てねばならないときも。
もちろん我々だっ想定すべき災害を他人事とは思わず「いつ、何が起きるかわからない」ことをしっかり考え、なるべく必要最低限で生きながら、そこに当然と喜びを見出せるよう日頃から気持ちを鍛えねばなりません。
とにかく現代の人々はモノを持ちすぎです。もちろん災害時や緊急時に備えるだけの「必要最低限で」と言っているわけではありません。「稼いだお金で好きなモノを買って、所有するものに満足し、大事にとっておく」という、そうした「いつのまにか行き過ぎてしまっている」とそう思わざるを得ない現代の日常を見つめ直さねばという視点と考察をこの本は与えてくれました。思えばここから私のミニマリズムが動き出した気がします。
他にもこの本の捉え方は読者それぞれだと思いますし、読者それぞれに響くものがあると思います。さまざまな視点から読み解ける物語でありました。 みなさんにもぜひおすすめしたいです。
- 作者: コーマック・マッカーシー,黒原敏行
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/05/30
- メディア: 文庫
- 購入: 11人 クリック: 54回
- この商品を含むブログ (67件) を見る
映画化もされており、小説の世界観を奥深くしっかり表現できておりました。